思うけど、思い出さない/さき
 
思う
絶え間なく思う
この時その時あの時の分かれ道
二分の一の右左右左の岐路に
それぞれ違う選択をしていたら
今私は違う私だったんだろうかと



天文学的確率の曲がり角
歩いてきた今があるわけで
選んだ私は何を思ってああしたのかなんて分らない
今となっては遅くて
何を言っても変わらなくて
意味がなくて
違う選択して幸せになった自分を想像するもの苦しいから
その分かれ道は思い出さない



あなたが笑ったあの日
私の家からあなたの家までの地図を描いてくれたとか
あなたが照れたあの日
私を大切にすると冗談みたいに言ったとか
あなたが酔ったあの日
テーブルの下ではずっと手を繋いでいたとか
私が好きになったあの日
あなたはもう、私を好きではなかったとか



思い出さない






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