観音像ノ声/
服部 剛
金で買われる夢があり
偽りで交わされる愛があり
富む者となるしたたかな術があり
そんな修羅の世を
罪に汚れた身のままに
今夜もとぼとぼ歩いていると
「 この世に在りて
汝の胸に保てるものはあるか 」
夜の帳の下りつつある刻に
山の上でほの白い頬を光らせ
瞳を閉じる観音像は
黙する言葉で我に問う
何処(どこ)かから夜風に運ばれる風鈴の音は
長い間両手で塞いでいたこの耳に
今宵 涼しい
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