せみが嫌い/八月のさかな
 
わたし、ほんとうはせみが大嫌いなのに
せみを見つけるのが
とてもじょうずで

命あるものみなとうとい
なんて嘘
目にみえるものすべていとしい
なんて、嘘

わたしはせみが嫌いで
でもせみがとまる木にふれるのは好きで
わたしはあの子が嫌いで
でもあの子が時折見せる笑顔はなんだか好きで
わたしはせみが嫌いで
でもひとときに鳴ききってはかなく散る、その生き様は好きで

結局わたしはせみが嫌いで
だれよりもさきにせみを見つけて、
だれよりもせみから離れたところを歩く

それでもせみは
たからかに鳴き続けるから
わたしはやっぱり
せみが大嫌い


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