★139 ムカエニ、イクヨ/貴水 水海
君の僕への愛の炎は燃えているかい
亜熱帯みたいな
駅の地下道で
ギターを弾いているお兄さんがいた
悲しくて切ない曲ばかりだった
何時間もギターを聴いて
目をうるませていた君
君の苦しみも
心にしまってあるものも
別けて欲しいと思った
君が笑ってくれるだけで嬉しかった
僕と君は
一緒に暮らすようになった
ペアのマグカップも
食器も買い足していった
僕の部屋から花火が見える頃
君は北の町に帰ってしまった
しがない物書きで病気がある僕への
気遣いだったのか
君が疲れて
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