かまいたち/あいこ
 

泣き果てて疲れる体を 抱き起こして 逃げなさいと

赤い血をめぐらせるような 踊りをおぼえなさいと

沸き上がる頭の奥で あの人ばかりが眼をつりあげる

死にたいくらいで すがりつかれるには弱すぎる体

消えたいくらいで 涙ぬぐうには痛すぎた堅い腕

願いを砕いて投げ付ける あの道の影から狙うかまいたち

刃の歯をむきださずには 人混みにたちむかえない

揺れながらも感覚をとりなさいと あの人は嫌笑みを差し出した

爪をのばさずにはものをつかめない 砂の味しか知らない者

耳に響くのは優しくも愛おしすぎる痛い機械のような声

温もりを通り越した熱さで私は燃えて消えてゆく

生きた様を右腕に残したままで

本当の眼はみせつけられない 弱いかまいたち

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