なにか言って/鳴々門 零
 
彼は泣いた
わたしが書き上げた詩を読んで泣いた
ことばに泣いたのではない
すばらしさなど彼にはわからないから
詩の気持ちがわかるから泣いたのでもない

むしろわたしの気持ちがなかったと気づいたことで泣いた?!

ちがうだろうか?

これはわたしの勝手な思い過ごしかもしれない
詩を書き上げたことで少し天狗になっている
戒めとしよう

無数のことばの連なり 彼には文字でしかなかった

激しい感情の吐露 彼には気でも違えたとしか思えなかった

その詩のなかにわたしはいない
だから彼の詩を持つ手が震えていた
そっと肩に手をかけようとしたが
なにかがはじけるのを恐れた
苦しさが込み上げてきて
思わず声をかけた
どう?

戻る   Point(2)