なにか言って/鳴々門 零
彼は泣いた
わたしが書き上げた詩を読んで泣いた
ことばに泣いたのではない
すばらしさなど彼にはわからないから
詩の気持ちがわかるから泣いたのでもない
むしろわたしの気持ちがなかったと気づいたことで泣いた?!
ちがうだろうか?
これはわたしの勝手な思い過ごしかもしれない
詩を書き上げたことで少し天狗になっている
戒めとしよう
無数のことばの連なり 彼には文字でしかなかった
激しい感情の吐露 彼には気でも違えたとしか思えなかった
その詩のなかにわたしはいない
だから彼の詩を持つ手が震えていた
そっと肩に手をかけようとしたが
なにかがはじけるのを恐れた
苦しさが込み上げてきて
思わず声をかけた
どう?
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