世界はひろくなったけど/八月のさかな
 

あのころ
まちの高台からみえる風景が
わたしの世界のすべてだった

背がすこしのびて

世界はどんどんひろくなり
わたしはどんどんちいさくなった

くるしいことも知った
かなしいことも知った
恋をするよろこびも
愛されるしあわせも
大切なものをうしなう辛いいたみも知った
世の中にはいろいろなものがあって
いろいろなことが起こるということ
少しずつ 知っていった

世界はひろくなったけど
わたしはちいさくなった

ひろい世界と
ちいさい自分
だから
歩いたことのない道ばかり
わたしは歩ける
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