肖像の胡弓/鳴々門 零
 
孤島の端に立って
ここに居をかまえようかと
老人のような囁(ささや)きを
口にする

年も揃(そろ)いこんでみえたと思うが
初倉の重たげな袖珍(しゅうちん)すら
ことが起こらずに触れないよう
鄭重(ていちょう)な怖さにも被って
武南の剣士の気取りか重鎮(じゅうちん)で
今ある

唇の震えが恐れ渦巻いているものは
おおらかな仕草を欠いた肖像の胡弓
真っ赤に染まる落日にとうとうと燃やされて
継ぎ目に点を打つのは後楽の園人(そのひと)
一面を塗りつぶそうとしても
虚構は満ちていく
この身を萎(しぼ)ませて
歓喜をよそおう仕組み

戻る   Point(0)