『禿頭』/しろいぬ
誓いを立てた夜は 月へジャンプして兎と餅つきをする夢を見る
楽しい夜が過ぎて朝になると 重力はしっかりと手足を縛り付けて僕をこの星から逃がすまいと必死だった
明日なんてこないよ
それはもう この星には残ってないよ
神様の囁く声が聞こえた気がして振り向くと
そこには禿げ上がった頭の中年男が虚ろな目でなにか呟いていて
僕は笑った
神様って意外と大変なんですね
そう声をかけて肩を叩くと男は
お前になにがわかるんだ って言って唾を飛ばした
それもそうだな と
僕はあなたのことなんて何ひとつわからない って
正直に答えたら殴られた
痛くはないけれど涙がでて
こんなものか って独りごちたら
もっと涙がでて困った
男の禿げ頭が涙で歪んで
まるで天使の輪っかみたいに見えて綺麗だった
ああ 世界ってそういうものなんだ
僕は目を閉じて
今夜も兎との駆けっこを楽しむことに決めた
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