深淵に響く足音/服部 剛
人は誰もが
完(まった)きできそこないであり
どこへ行っても人の輪へ入れば
金曜の夜の飲み屋では
ぶーすか ぶーすか 愚痴(ぐち)っており
海の向こうでは今もなお
殺し合いが続いており
かく言う僕さえ
自分の瞼(まぶた)の上に
埃がつもっているのを知らぬまま
口にする言葉よりも早く
他人の表情を打ち消している
「 皆で手をつなげば「和」ができて
心の姿は丸くなるのに・・・ 」 と
人の心のたくさんの穴ぼこを埋めきれずに
今夜も帰りのバス停でうつむいて
独りでバスを待つ酔いどれのそげ落ちた肩に
ほの白い光の
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