北新地エレジー/大覚アキラ
なもんなのかねぇ。よく、バブルのころ……という物言いを聞かされることがしばしばあるんだけど、ぼくが就職したのは1991年で、すでにバブルは終焉を迎えていた。だから、バブル最高潮のころのサラリーマンの日常っていうのが、いまいちよくわからないんだよね。
午前中、仕事の合間に北新地を通ることがある。小料理屋の店先を若い見習風の店員が掃除していたり、仕込みのトラックがボンヤリと道端に停まっていて、夜の北新地とはまるで別物だ。
太陽の光に晒されてネオンの消えた新地は、まるで化粧のはげた年増美人のように見える。でも決して醜いのではない。心地よい倦怠感と、祭りの後のようなやるせなさが漂い、また新しい日常が始まることへのゆっくりとした助走がそこにはある。
だから、ぼくは、真っ昼間の北新地を歩くのが好きなのだ。
(初出:jet news vol.026 2001/11/15)
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