夢の汽車に乗る人/服部 剛
 
時間(とき)の無い惑星の
始発駅で発車のベルは鳴り
無人の汽車は走り始める
満天の星空の下
砂丘の果てへと続く線路の上を
男は車窓から夜空に小さく瞬く地球を見ている

「無限の宇宙の片隅に浮かぶあの青い惑星に
 あの日、私は確かに産声をあげた
 歓び歌う天使が一通の手紙を
 生まれたばかりの私の枕元にそっと置いていった」

「地上で過ごした懐かしい日々よ・・・
 父も母も兄弟も友も恋人も・・・自分自身も・・・
 食卓を囲み微笑みを交わした日々は皆一瞬の夢・・・」

全ての想い出の場面を地上に置いて
男は独り夢の汽車に揺られて
未知への旅に出る
ポケットに
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