ボールパークに夢を 〜海を渡った侍 松井秀喜に捧ぐ〜/服部 剛
 
ていた

ポケットには
「現実の壁」を幕のように切り開く
刃(は)の光るハサミを入れて

腕の太さも胸板も松井秀喜の半分しかない
給料などはちりほどにもない
名も無き文学青年と
海を渡った侍との
夢の質量を比べていた

野球人はバットを刀とし
真夜中に独り汗水たらして闇を切り
月に向かって放たれる白球の夢を垣間見(かいまみ)る

詩人はペンを刀とし
ランプの明かりの下 白紙の上に想いを綴りながら
真夜中に遠くから聞こえて来る列車の音に耳を澄まし
この世で過ごす日々の出逢いの物語を描いた無数の手紙を
詰め込んだ貨物列車が線路から浮かび上がり
月に
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