飛ぶ/「ま」の字
 
 
石の
哀しヵ
地上にちいさな地蔵と影

落下音が
大洋にさびしくひとすじの尾を曳いたあと
爆心の地に眠りこむひとつの臓器
ゆめだけがのこる そらをとぶ と

この飛行者には
防護服がない 時計がない 識票がない
ポケットの手記からいっさいの記述は消え
黄ばんだ地図はやぶれ散り
喉に ゆびに絡みついたこひびとのロケットをも失くしてしまっている
ああ宿命!
おまえには天が暦がわりに与えた
宿命もないと

 広漠としてとめどないゆうぐれが溢れテい

 遠雷

まっくろにたちあがる積乱雲のうえを

ゆく

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