天の川に架かる橋の上で/服部 剛
明日の朝も僕は
バスの後部座席に重い腰を下ろしては
昨日のメールで君が励ましてくれた言葉を思い出し
リュックの中から取り出した本を開いて
挟んでいた君の写真をみつめるだろう
遠い町に住む君との距離が
写真の中の瞳をみつめる時に
ふと 縮むような錯覚を願う日々を越えて
いつか美術館で見た額縁の中の情景に足を踏み入れて
花園に流れる川に浮かぶ小船を漕いで
君を迎えに行けたらいいな
昨日の仕事を終えた後
深夜になった職場の老人ホームの部屋は
日中のお年寄りの声のにぎわいが幻のように静まり返り
7月になって白板の両脇に立てられた笹の葉に
色とりどりの願いをこめた短冊や
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