木陰のひととき/服部 剛
弱気の虫がうじうじと
しめった胸の内に這っていたので
気分を変えようと散歩に出かけた
公園には木の幹の周りを
丸い木目のいすで囲んだ優しい木陰があったので
荷物を降ろして腰かけた
〜
昨日仕事を終えた後に
職場の本棚から取り出した本の項(ページ)を開くと
コラムの中で社会の風当たりにうつむいて
壊れかけの夢を抱えて実家の寺に帰ってきた
新入社員の娘に坊さんの父親は静かな言葉を語りかけていた
「 お前の胸に沈んだ太陽もやがては昇り
空を覆う暗雲のすき間から放たれる光は
萎(な)えていた魂の器(うつわ)にあふれるほどにそそが
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