ひとりぶんの空間/エズミ
言葉が逃げていってしまう。
わたしは言葉を結びたい。さといもの葉っぱが夜露を結んでころがすみたいに。
そんなふうにして、わたしは心のかたちの一部分を作っていたのだ。
わたしの目や耳やからだの表面から透過したもののうち、或るものはそのままのかたち、或いは印象や感触や記憶のかけらとなって散らばっている。
それらさまざまを自分自身に語りかけたい。そうすることで、そのさまざまはわたしの裡にかたちを持って、残る。若しくは百千の蜻蛉玉をとりとめもなく繋げて輪にしたように、持ち重りを生む。
残しておきたい。それでも、逃げていってしまう。
浜辺を歩くと薄ひらたい聖餅のような形をした棘皮動物の殻がい
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