縁取られる光、闇に消えていく思い出/チャオ
 
へ、幻想へ。限られた記憶が体中を貪る。忘れてきた思い出が発起していく。体が覚えている興奮を思い出すために、憂鬱になったり、怒りがこみ上げてくるときもある。
どこかに立ち寄って一日に雰囲気をつけたい。そう思っても、財布は許さない。家に帰り、テレビのスイッチを入れると、街角で見かけた顔が勢ぞろいしている。大きな看板の顔が脳みその細胞を牛耳っている。ため息なんかつかない。座りけた腰を再びあげる。忘れられた思い出がある。光に当てられない感情がある。やるべきことをリストアップして、他人のことを羨んだりして、ようやく今まで生きてきたのだと、誰かの耳元でささやいて。
世界に住所がある。メモ書きされた昨日の紙には小さな番号が記されていた。規制された世界が欲しいと、約束された世界が欲しいと、前に進むことを恐れている。
メモに残された興奮が、次第に蘇って来る。テレビを消す。大きな看板の、大きな顔を見すぎた。忘れ去られた思い出を再び思い出すことはない。

銀色のコップに作り置きした麦茶を入れる。画面の消えたテレビのまえ。反射した自分の姿が見える。鉛筆を回しながら、知ったかぶりのリズムをとっている。
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