線路の枕木に伝う音/服部 剛
 
あの頃 夢の方角が記された地図を胸に抱いて
光る線路の上を閃く流星の姿で走り抜けた若人よ
気まぐれな強風に振り落とされた君は
いつしか線路上から姿を消してしまった

「腐った瞳の大人にならぬよう・・・」
と誓っていた君が
大人になって鏡に映した自画像には
疲れ果てた顔に腐った二つの瞳が充血していた

地図を失くした君は
線路の下に隠れた影溜(かげだ)まりに
いつまで身をうずめているのだろう・・・?

暗闇に立つ梯子(はしご)をどこにも見つけられぬまま
遥かな頭上で見守る満月からそそがれる淡い白光を
うずくまる身にためこんで
魂に新しい翼の生える{ルビ瞬
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