時の無い都市/服部 剛
私は今まで通り過ぎて来た
広大な荒地の上に黒い血を吐いた
無数の遺体の傍らを
倒れかけた木造の家の
ベランダに干されたシャツが
突風に身をよじらせ
空に飛んでいく様を見ては
鈍い心の痛みに手を当てながら
目を逸らしていた
荒地を過ぎると
無人の都市にビル群は聳(そび)え立ち
ビル風に全ての物は倒されていた
へし折れた街路樹達
ひび割れたバス停の時刻表
駐輪場に重なるドミノ倒しの自転車
音も無く吹く風が
「幻の人」の姿となり
倒された一つ一つの物の傍らにしゃがみ
手を当てると
ある者は足萎(あしな)えの老婆に
ある者は白髪ま
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