Cafe Le Poete/服部 剛
 
歪んだ陶器のティーカップに
微かに波打つ紅茶の中で
一塊(ひとかたまり)の砂糖が溶けてゆく
長い間 抱えていた悩みのように

「着々と時間が解決してるじゃないですか」

カウンターでワイングラスを拭きながら
うつむいた微笑みで呟く髭のマスター

 〜

若い頃のマスターがヒッチハイクをしたフランスで
車から降ろされたのは田園風景広がる片田舎
やがて日は暮れ宿も無く長い夜を過ごした後
橋の袂(たもと)の石垣に凭(もた)れていたら
明け方の畑に挟まれた小道の向こうから聞こえて来るエンジン音に
残る力を振り絞り右手を挙げた

旅の最後に辿り着いたセ
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