荷物違い/服部 剛
若い頃
「やさしさ」は理想の全てで
自分や人の 心も 体も
真っ白なペンキで塗りたくろうとしていた
大人になるにつれ
白いペンキはふしぶしで剥(は)がれ落ちた
テレビの箱の中はエルサレム
「自爆テロで数十人死傷」のニュースを
嘆(なげ)いて画面を消した後
ほら
すぐに
ささいなことで
隣の君と小競り合いが
勃発(ぼっぱつ)してるよ
一人こもった夜の部屋
ふとんを被(かぶ)った耳元で
黒い小人が囁(ささや)いた
「おい、Mr・偽善君、
まだ気付こうとしないのかい?
サファイアのようなまなざしをそそい
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