道の右と左に/
紫音
鬱蒼と茂る蔦と枯木が這う廃屋
誰も居ない清々しい生の匂い
なびく髪に感じる生々しい脈動
帰らぬ主を待つひび割れた扉
軋みながら倒れ逝く門柱
彷徨い込んだ痩せこけた犬
布団が干された錆付いた柵の家
漏れ聞こえるワイドショー
踏みしめるアスファルトの硬度
一つ一つの細胞に刻まれた
遥かなる記憶の残滓
間延びした目覚ましの音
空はどこまでも蒼い
風はどこまでも遠い
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