瞼の裏/佐々井
 
片目を瞑り、絵描きの筆を持ち
灯台と私との距離をはかる方法は
私には大切なもので、片目だけ瞼の裏を見る

そこにある虚像は
私の中にある真実だから
これをいっぱいにしたくて
絵を描き続けている

みんな愛してるよ
そんな言葉を掛けながら
風に削り取られながら
私は描き続けた
私はついに描き終えたんだ

そこに映ったものは
いつもの風景だったので
絵を、破り捨て
海へ、投げ捨てて
私を、破り捨て
海を、投げ捨てたら
瞼の中の出来事だと気付いて
私はもう一度
私との距離をはかった
そこにはもう
比べるものさえなかった






 作 のどあめ
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