相反する時制で/安部行人
僕等は話した――
いつでもない時のことを
音声が行き交った、焦点は結ばれなかった。
それは戯れだった、
語の群れの、
午後の戯れ。
僕は既に複数形だった、いくつもの相反する時制で語った。
因果律の直線はねじれの位置を取った、
僕/等はそれを俯瞰で見た。
戯れの時、
彼岸の音楽がうちよせる。
僕はその方向を見ない。
僕は話す、
いつでもない時に。
僕/等は耳をふさぎ音楽をさえぎる、
微かな雑音が滑らかに散り拡がる、
僕等の前に沈黙が華やぐ。
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