陽炎/秋葉竹
雨あがりの浅い夜
アスファルトの割れ目の水たまりに
月がキラリと映っていた
すべてが順調なことなんてなくて
ジェンガが崩れるように
こころが崩れてしまったたそがれどきから
どこを
どう歩いたのか
まるで憶えていないままの街並み
常夜灯が点滅する
ひとけのない小道
下ばかりみて歩いていると
水たまりに月が
泳いでいたってわけ
たったふたつの矜恃だけ
こころに刻みこんだのは
はるか遠いときの陽炎
わずか十七の冬だったか
じぶんを使い切ること
じぶんをやさしくすること
その誓いのような矜恃がいまも
あがいているのだけは
ほんとうの
ほんとうだ
雨あがりの浅い夜
アスファルトの割れ目の水たまりに
月がキラリと映っていた
すべてが順調なことなんて
なくてあたりまえだと
もういい加減
知り尽くしているのだけれども
なぜかそのちいさな水たまりに
天国への階段が
みえた気がしたのは
遠い日の誓いがみせた
陽炎だったのだろうか
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