『風の祈り ― 鬼吉と澄乃』 第三章:白き隔たり/板谷みきょう
 
村の境に、真っ白な札が貼られた。

「鬼は入れぬ」と村人は胸を撫で下ろす。

だが澄乃には、それが吉の帰る道を
塞ぐ冷酷な壁に見えた。

紙切れ一枚にすぎぬが、
それは「違うもの」を拒絶する
力の象徴だった。

自分たちだけが
清らかであろうとする村人の
無意識な残虐性。

澄乃は守られる側の共犯者として、
結界の内側に閉じ込められた。

内にも外にも居場所はなく、
白い壁を見つめる日々。

祈りは弾かれ、胸の奥の小さな炎は
揺れたまま消えはしない。

消したくても消せぬその火が、
彼女の命を静かに削る。
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