印/後期
はいつも、印刷前に削られる
家の柱に残った傷、
夜中に響いた咳、
台所の流しに溜まった脂、
それらは一行に収まらない。
黙秘、とある。
沈黙は記事になるが
黙ることは紙面を破る
町は今日も晴れだ
洗濯物が風に揺れる
誰かが同じ朝刊を読み、同じ四角を目にし、
すぐ忘れる。
忘れられることまでが、記事の仕事だ。
だが、紙面の奥で、
まだ乾かないものがある。
インクじゃない
もっと古い
血よりも濃いものだ。
それは活字にならない。
ならないから、ここにも居座る
朝刊を畳んだあとも、
指の腹に残る、ただれた烙印。
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