印/後期
 
はいつも、印刷前に削られる
家の柱に残った傷、
夜中に響いた咳、
台所の流しに溜まった脂、
それらは一行に収まらない。

黙秘、とある。
沈黙は記事になるが
黙ることは紙面を破る

町は今日も晴れだ
洗濯物が風に揺れる
誰かが同じ朝刊を読み、同じ四角を目にし、
すぐ忘れる。

忘れられることまでが、記事の仕事だ。

だが、紙面の奥で、
まだ乾かないものがある。
インクじゃない
もっと古い
血よりも濃いものだ。

それは活字にならない。
ならないから、ここにも居座る
朝刊を畳んだあとも、
指の腹に残る、ただれた烙印。


戻る   Point(1)