印/後期
朝刊の隅に、指先ほどの四角がある
折り目の影に半分隠れて、誰も気づかない
《同居の父(六八)を刺す。無職の長男(四二)逮捕。動機は黙秘。》
それだけだ
血の色も、部屋の匂いも、畳のへこみも、書いていない
活字は乾いている
乾ききって、軽い
指でなぞれば、すぐ次の記事に滑る
株価と天気予報に挟まれて、親は死ぬ
父という文字は二画でできている
簡単だ。
だがその二画の裏には、何年分の沈黙が積もっているのか
長男、という語も軽い
順番を示すだけの記号だ
最初に生まれただけの身体
その身体が、父の身体に刃を入れた。
新聞は理由を求める
だが理由はい
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