ことば使い師のうた/秋葉竹
 
めいに
少女に声をかける

《ぼくも》

《知っていた》?

少女は
こころのなかで
いままでのさみしさをあらためて知って
泣きそうになりながら
おずおずと
小鬼の手を取った

小鬼が
頑張って声を出してこたえる

《もうさみしくない》

《ぼくも》



世界が止まったままの街角の
一瞬だけの
ちいさなあたたかい火が灯るふたりのこころ

ふたりは
しっかりと手を握りしめたまま
蒼空へつづく階段を
ゆっくりと昇りはじめる
おたがいをみつめあったまま

ふたりがふたりとも
ポカポカしたきもちのまま
あたたかい世界へ向かって
昇ってゆく
昇ってゆく


……………………………


そしてふたりがみえなくなったころ
止まっていた《とき》が
動きだす

なにひとつ変わっていない
さみしさがふたりぶんだけ減った
やさしさがすこしだけ軽くなった世界が

ふつうの世界が
そこには取り残されて
?






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