影の声/後期
 
夫である。

しかし、大丈夫を積み重ねすぎると、
大丈夫の影が揺れて見える。
揺れるのは、疑う力がある証拠だ。
疑う力があるのは、健全の証拠だ。

だが、健全な証拠があるからといって安心してよいのか。
いや、そうとも言えまい。
どこかに黒い手があり、すり替えられたかもしれないじゃないか。
如何にもありそうな処に、証拠をソッと置く組織ぐるみの黒い手だ!
私印満載の、見覚えのない捏造の物証が、健全の顔をして私を貶めようとしているのではないか?

君には黙秘権がある!

朝から頭の中が冤罪で少々騒がしい。

騒がしいが、音はしない。
音がないのに騒がしいのは妙だ。
だが、妙だと思えるうちは、大丈夫ですよ、と弁護士が漸く囁いてくれる。

「くれぐれも、田中さんが、よろしく頼む、と言っていました」

頭の中、繋がれた私に、弁護士は呟いた。



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