小説の習作 原稿用紙五頁 #06/田中教平
」
カナが告げて、ユウスケは現実なのか妄想なのかわからない思考から、一気に一杯の塩ラーメンに戻ってきた。
「考えが高速で展開して苦しくなる事ってない?」
「ないわよ、ねぇそれよりユウスケ」
「?」
「ラーメンの麺、そっちに多く入れちゃったの。ちょっとちょうだい」
ユウスケは笑って
「しょうがないなぁ」
と、ラーメンの麺の残り、カナに譲った。
雲が次第に大きくなっている。
しかし、雨は降っていない。
ユウスケは箸を置き、窓の外を見た。雲はさっきよりも低く垂れ込めているように見えた。けれど、雨粒は一つも落ちてこない。
「降りそうで降らないな」
ユウスケがつぶやくと、カナは麺をすすりながら、
「そういう日もあるよ」と言った。
その声が、妙に遠く聞こえた。
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