咲子?/たま
 
、ときどきは行き悩んで、愛するひとを見失うこともあるとおもうわよ」
「足?……」
「そうよ。愛には、夂(ち)があるでしょ?」
 咲子はわたしの目のたかさに夂の字を指でなぞった。
「あ、なるほど、だから愛は行き悩むのか……ふーん、よくできてるよね……」
「なにが?」
「漢字ってさ……」
「ん、おもしろいでしょ、うふっ」
「でもさ、そんなたよりない愛を信じて生きて行ける人間って、すごいとおもうけど、ぼくはまちがいなく行き悩むタイプだよね」
「あ、……それはだいじょうぶよ。愛の足はね、結婚したら根っこになるの。そしたらさ、もうどこにも行けないから、悩むこともないでしょう……ね?」

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