手放していく/はるな
な。頭のおかしいふりをしている。お前は醜い。変な恰好をするな。そういうようなことを言う。そして同時に、自分たちはよく似ている。お前にはわかるはずだ。お前のことがわかる。そうも言う。一番苦しいのは、姉の亡霊がずっと、自分の真似をするな。と言ってくることだった。この世にわたしのものは何ひとつないのだと思わされた。何も。ひとつも。どんなにきれいなものをみて「きれいだ」と思ったとしても、その心地も自分のものではないのだと思わされた。
その苦しみを、どういう風にも解消できなかった。ただ幸福なことに、わたしにはわたしの人生が残されていて、夫と知り合ったり、むすめと出会ったり、花を生けたりすることを覚えた
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