『三郎沼の守り火』 第五章:一つ星/板谷みきょう
山の方から重厚な声が落ちてきた。
「河童三郎の命と引き換えに、この地を護ろう。」
雲が裂け、夕暮れの空に
濡れたような一つ星が灯った。
沼は沈むことなく守られ、
ダムの計画はいつの間にか
立ち消えとなった。
村人たちはその星に
「三郎星」という名を与え、
救い主として崇めた。
だが、その光の裏で、
苦悶と消滅があったことを語る者はいない。
救済とは、誰かの死を美しい物語で塗りつぶし、
生き残った者が忘却するための手つきのことだった。
[グループ]
戻る 編 削 Point(0)