『三郎沼の守り火』  第二章:青蛇の問い/板谷みきょう
 
三郎は、屏風山の入り江に住む老いた青蛇を訪ねた。

「どうすれば、誰も泣かせずに済む道が見つかるべか。」

かつて龍になることを拒んだ蛇は答えず、ただ長い体をくねらせ、
細かな波の立つ水面の一点を静かに指し示した。

そこには、何も映っていなかった。

あるいは、すべてを呑み込む深淵があった。

三郎はその沈黙をしばらく見つめたあと、
深く一礼して沼へと戻った。

蛇が示したのは解決策ではない。

何かを守るためには、自らが
「無」になるしかないという過酷な道標だった。

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