谷間にとじる鼓動の傘をおいかけて ―なくしたものと出会える町で―/菊西 夕座
という愛しいあなたのかたわらで。
いつか私をなくしても、「霧のむこうのふしぎな町」であなたとふたたび出会うだろう。
ありえないことと無下に閉ざされる、瞳の奥にこそありえない世界はとびらをひらく。
なぜならそれがわたしとあなたの合図だから、ページをひらいてかわした晴れ間だから。
ミスをして私がまよいこむであろう霧の世界に、あなたがあらかじめ用意してくれた秘密の通路。
ファンタジーが奏でる赤や白やピンクやむらさきのツツジがまだらに咲きほこる垣根ごしにみえる、
あなたのすでに通った足跡、鼻孔から吸いこんだ薫りと、みたされた胸から贈られるあたたかな息吹。
もういちど抱きしめくるまれる予感に胸おどらせながら、谷間にとじる鼓動の傘をおいかけていく。
――本をよみつつ、片手で枝毛をさがしながら髪を垂直につまみあげる癖であなただと気づく、雨後のむこうのシルエット。
※<>内は『霧のむこうのふしぎな町』からの引用。
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