星にならなかった河童 最終章 星になれない河童/板谷みきょう
 
星になった河童を、見た者はいない。

夜空に、それらしい星もなかった。

見つかったのは、下流の淀みだった。

名もない場所に、
壊れた体が引っかかっていた。
しかし
誰のものかは、分からなかった。

銀色の鱗に覆われたその体は、
もはや人の形をしていなかった。

分からないままにしておくことが、
それこそが、正しかったのだ。

だから人々は、物語を選んだ。

「河童は星になった。」

そう信じることで、
村は今日も数を数えずに済む。

夜、川の音がやさしい時、
年寄りたちが空を見上げて
「今日も、静かな星だ。」
星が、誰のものでもないことを
知りながら言う。

その喉を、
銀色に濁った水が通り過ぎていく。

そして橋の杭では、
忘れるために結ばれた鈴が、
誰にも聞かれず揺れていた。
[グループ]
戻る   Point(1)