すすき野原の物語(境界を封じる釘)/板谷みきょう
ような冷たい感触が、彼の指先に走った。
それは、少女が失くしたおはじきでも、鬼の体温でもない。
「言葉を奪われた者の、底冷えする沈黙」だった。
村の大人たちは、祠に鍵をかけることで、子供たちの“心”を去勢したのだ。
祠が閉じた瞬間、少女の瞳から光が消えた。
彼女は自分の“本当の名前”を思い出せなくなり、
ただ大人たちが望む通りの「聞き分けの良い人形」へと
変わっていった。
それを見届けた村長たちは、満足げに頷き、酒を酌み交わした。
「これでいい。村は正しくなった。」
だが、祠の影で与一だけは見ていた。
完璧に封じられたはずの祠の土台の隙間に、
大工の棟梁が密かに忍ばせた、あの一枚の「落書き」を。
そして、
その落書きが、大人たちの言う『きれい』な支配を
内側から腐らせる、唯一の毒にして薬になることを。
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