すすき野原の物語(境界を封じる釘)/板谷みきょう
 
村長と長老たちは、神社の拝殿に集まり、脂ぎった顔を突き合わせていた。
彼らにとって、すすき野原の「影」は、もはや恐怖ですらなかった。
それは彼らが築き上げてきた「村の秩序」を脅かす、目障りな不純物だった。

「子供たちが、あの影に“名”を付けて遊んでいるそうだ。」

長老の一人が、吐き捨てるように言った。

「あいつら自分が誰から生まれたのか、子供のくせに誰に従うべきかも忘れ、あの影に、親にも見せない顔で笑いかけてる。これは叛逆だ。我々が与えた『家名』や『身分』よりも、あの野原に捨てた“記憶”のほうが大事とでも言うのか。」

村長が、横に控える大工の棟梁を冷たく見据えた。

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