河童伝・第五話「子供と河童」/板谷みきょう
「……ここ、静かすぎる。」
その言葉に、婆さまは息を呑みました。
沼は、かつて静かだったことなど一度もない。
水があれば音があり、
水が無くとも、土は生き物の気配を宿す。
……静かすぎる、というのは、
そこに居たものが、すべて居なくなった場所の音でございました。
その夜、あの子は夢を見ます。
夢の中で、沼は水を取り戻していました。
けれど、水面には星も空も映らない。
映っていたのは、
一人の河童と、一人の子ども。
河童は、皿を持っていませんでした。
名を呼ばれぬものでもない。
ただ、名前を持つ前の姿。
「ここ、寒
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