智慧と慈悲と愛/杉原詠二(黒髪)
一度目が壊れると
世界は遠のいていく
私の実情は
遠くのものを近くへ
近くのものを遠くへ
つまり
外部的なものを
心の中へひきつけ
処理をできる状態へと変えること
存在を声に変えて呑み込むことを
行うべきことを要請していた
今
すべての視界と
すべての音は
外界を構成しながら
私の中で
私自身と宥和している
つまり私という働きは
その微妙なる地点を過ぎて
確かな実感として
智慧が慈悲に届こうとしている
智慧によって他者の慈悲の構造を
己のものにすることは
他者の慈悲に誠心から応答すること
慈悲は
智慧の力を帯びることで
愛を超え
さらなる把握へと
私を動かす
慈悲によって方向の定まった智慧は
己の本分を越えることなく
正しき働きの中で
一切の苦しみを
鎮める
そのとき私の存在は
法と一致する
人間の法は
内側にあった
それを目覚めさせたのが
外にあり
私のものではない
愛であった
愛を求めたくて
盲目なる私に
チャンスをくれたのは
神仏ではなく
たったひとりの人だった
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