さざんか/りつ
 
夜来風雨の声に耳を澄ませている
さざんかは
桜よりは強情だから
簡単に散りはしない
容易く咲かない分
しぶとく咲いている
遅咲きの矜持とでも言うべきか
真冬の灰色めいた色彩の町で
紅朱色が目に鮮やかだ
まるでそこだけ仙人境に続くような
小道を歩けば薫らないはずのさざんかが
薫っているように感じる
それでいて
散るときは
ひとひらひとひら舞い落ちるのだ
私は冬と言う厳しい季節に咲く
強く逞しく熱を帯びたさざんかを愛す

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