冬の磁場/岡部淳太郎
 
秋が深まり
冬が近づいてくると
この国の人々は次第に幽かになってゆく
秋とは空きであり
物事に空きが出来る季節
それに対して冬は不結であり
何もかもが互いに結ばれずに
バラバラに佇んでいるさまを表している

そんな中で
人々が幽かに
頼りなくなってゆくのは
理の当然である
冬の訪れとともに
年末に向けて
この国は幽かにすべつてゆく

元々幽霊とは冬の存在である。幽霊の本場のイギリス
ではチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロ
ル』に見るように、年末のクリスマスの時期に祖先霊
が帰ってくる。日本のお盆がイギリスではクリスマス
になっているという寸法だ。
[次のページ]
戻る   Point(4)