雨になりつつ/由比良 倖
 
誰も私を見てくれないので
私は皆を見詰めている
皆同じ酸素を吸うのか私には分からない
私は何度目か、死のうとしている

青さや理屈が漂う
私はビルの隙間の廃道にいる
古びたメモに詩を書きながら
この世の死を数えている

やがて羽の降る季節が来ると
風は冷たくて宗教のにおいがする
街は宇宙の中にある そして
宇宙の底に私がいる

何度目か死のうとして、薬をちびちび飲んでいる
羽が唇に触れると、私は笑う
喜びも悲しみも無いのに、
生も死もそんなに空虚ではないのにな、と思いながら

私は人の心を見詰めてきた
誰も私を見てくれないからこそ
世界の中心に
私はいつだって生きていたのだ
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