マルチタスクができない幸せ/イオン
 
「マルチタスクができる人ってすごいよね
 左右の脳で別々のことできるんだって」
「へぇ、そうなんだ」
路線バスの中で前の席の女子高生が会話が
私のタスクに割り込んだ
いやそれは間違いだよと言いたくなって
説明するとしたらと考えた

複数のタスクを
同時並行で進めているつもりが
タスクを爆速で切り替えているだけで
その都度脳は一度停止して段取り変えを行うので
生産性は四割低下してミス発生率が五割増加する

半分の時間でこなしたと本人は満足感を得るが
実際にはそれぞれのタスクにかかった時間は
五割増加しておりパフォーマンスが落ちている
マルチタスクをやめれば残業社会がなくなるのだよ
会議に出席しながらパソコンで内職している大人の
みっともなさを君たちに見せてあげたい

説明タスクを終了し
会話傍聴のタスクに切り替えたら
女子高生の話題はぬいぐるいみに変わっていた
まぁいいさと外を見たら
降車ボタンを押し忘れていて慌てて押した
マルチタスクができないほうが幸せだよと
女子高生の背中につぶやいて席を立った
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