羊羹のまま/花野誉
 

私が髪を切るとき

羊羹を包丁で
切るみたいであってほしい

髪型を変えても
大抵、夫は気づかない
それでいい
なぜか
それがいい

髪を切るのは
飽き性の私の
ささやかな喜び

自分だけが楽しむ
定期的な儀式

羊羹を包丁で切ったとき
右も左も
ただ羊羹のまま

髪を切っても
私の心以外
何も変わらないのがいい

母は違う
髪型を変えたとき
なにも気づかない父に
よく怒っている

羊羹を切ったとき
切った半分が
ういろうか何かに
変わってほしいのかもしれない
たぶん




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