すすき野原で見た狐(下巻)/板谷みきょう
 
く。胸に押し寄せるのは、底知れない感動と、遅れて訪れた深い後悔だった。

第四章:継承の決意と静寂
狐は、白い苺を噛みしめたまま、与一の魂の温もりを全身で感じた。

「与一……わしの、みっともない姿……見ておったんじゃろ?……なのにのう……。ありがたいもんよのう……ならば……わしは、その想いを抱えて行こう」

そして――与一に化けることなく、静かに野原の影から立ち上がり、社の方向へ歩き出した。

村人たちは畑を見つめ、言葉少なに立ち尽くす。誰も騒がず、ただ静かな涙が、泥にまみれた頬を伝った。誰も責めず、ただ――心の奥で、与一の孤独な勇気と愛を思い浮かべる。

苺の香りが夜風に
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)