すすき野原で見た狐(下巻)/板谷みきょう
重なり合ったまま、静かな風だけが吹き抜けた。
第三章:遅れて届いた報い
その頃、山の下の村人たちは、踏み荒らしたはずの畑で立ちすくんでいた。
土の中から、手のひらほどもある、白く大きなジャガイモが、無数に顔を出し始めたのだ。泥だらけの手でそれを掘り出す瞬間――雷に打たれたような痛む理解が胸に走った。
「与一……本当に……」
手のひらに伝わる温もりが、与一の姿を幻視させるような錯覚を覚える。この豊作は、冷笑や憎しみを超えた、与一の純粋な愛と、見えぬ献身が生んだ奇跡だった。彼らは言葉を失い、ただ、手の中の命の塊を見つめた。騙されていた怒りも、嘲笑も――すべて静かに溶けていく。
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