すすき野原で見た狐(上巻)/板谷みきょう
ただ――与一が葉を置いていった夜には、狐の足取りは、少しだけ軽かった。
「……ちいとずつで、ええ」狐は誰にも聞こえぬ声でそう呟き、息を整え、また回る。
終章:交わる孤独
ある凍える夜、与一はそっと野原を歩き、狐の練習する姿を見つけた。焦げ茶の耳が覗き、尻尾が揺れ、それでも必死に葉を押さえ、回る姿。馬鹿げてもいる。けれど、胸の奥を打つ切実さがあった。
与一は、声にせず拳を握る。(がんばれ……がんばれ)その念のような想いが、冬の空気を通して、狐に届く。
狐は葉の置き方を変え、足の運びを変え、焦燥を少しずつ、静かな希望へ変えていった。
与一は葉を集めることを。狐が化けることをやめないこと。どちらも、孤独な者だけが知る、かすかな頑張りだった。
原作「すすき野原で見た狐」を修正しました
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